普通の魔法使い、即ち、泥棒

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再び時は飛び。 朝だ。 朝が来た。 ついでに泥棒も来た。 白黒だ。 本当に白黒だ。 その白黒は白黒テレビに潰されていて身動き一つしないが。 僕だ。 僕がやったんだ。 一応誰に言うでもなく弁解をさせていただくが、仕方ないじゃあないか。 外で何やらコソコソと店の商品を物色している白黒がいたんだから。 だから仕方ないじゃあないか。 上から白黒テレビを落としたって。 服装的にこの白黒の魔女っ娘は話に聞いていた泥棒かつ常連であるという少女なのだろう。 なんでも、しばしばお茶を飲みに来て、ついでに物を置いていく事もあれば逆に持っていく事も多々あるとか。 とりあえずは中に運ぼう。 幸い死んではいないみたいだ。 霖之助さんも既に出掛けているし。 というわけで早速能力の出番だ。 テレビをどけ、白黒を浮かばせ、ドアを開けて店の中へ。 都合よくソファーがあったのでその上でフォール。 させたのがいけなかったのか。 見事に仕事をしたソファー内部のバネのお陰で跳ね上がった白黒の身体は、位置エネルギーをそのままに床へと落下した。 それも顔から。 「ぶへっ」 泥棒とはいえ女の子とは思えない声をあげた白黒。 だけど目も覚めたみたいなので結果オーライだ。 「んー、なんか顔と頭が痛いぜ。ん?お前は誰だ?」 「君が誰。」 「おいおい、人の名前を聞くときは自分からって教わらなかったのか?」 この人は何なんでしょう。 「だけどまあ折角聞かれたんだ。答えてやるのもやぶさかではないんだぜ」 ああもう、本当何なのこの人。
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