普通の魔法使い、即ち、泥棒

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「私は霧雨魔理沙、普通の魔法使いだ」 「泥棒では?」 「失敬な。私は死ぬまで借りてるだけだぜ」 何を言いやがりますかこの白黒は。 「んで、結局お前は誰なんだ?」 「東海林 琢磨。普通の居候」 「じゃあ琢磨。聞きたいんだが外にいたはずの私はどうして香霖堂の中に居るんだ?」 「さあ」 ええ、惚けましたとも。 それが何か? 「んー、この私の頭部の痛みが何かを訴えている気がしなくもないが。まあいいや、とりあえず色々見せてもらうぜ」 「盗まないで」 「だから借りるだけだって」 絶対盗む気だこの人。 これは店番として断固阻止せねばなるまい。 「僕は店番。盗むなら阻止する」 「だから借りるだけだって」 「阻止する」 「なら仕方ない。それなら力ずくだぜ!」 やはり盗む気でしたか。 それにしても力ずくなんて極端な。 僕はどうしてもこの人にジャイアニズムに似たものを感じざるを得ない。 お前の物は私の物、私の物は私の物だぜ! なんて言ったりしても違和感がない気がする。 まあとにかく阻止しなければならない事は明白だ。 しかも聞いた話では彼女はかなりの実力者。 まともにやっても敵わないだろう。 ならば…… 「これでも喰らえ!」 そう言って白黒が取り出そうとしたのは謎の物体X。 だけどそうは問屋が卸さない。 僕は能力を発動し素早くそれを奪う。 「あっ、おい!返せ!人の物を盗るのは泥棒だって知らないのか?」 「死ぬまで借りてるだけ」 代わりに同じ言葉を返す。 「分かった、何も借りないからそれを返してくれ!」 「本当?」 「本当だって」 じゃあ仕方がない、返してあげよう。 でも一応保険として外にある彼女の箒は隠させてもらうけど。 「返す」 能力で浮かばせて渡す。 「全く、なんて奴だ」 それはこちらのセリフですよ。
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