普通の魔法使い、即ち、泥棒

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「そういえばこーりんは何処に行ったんだ?」 霖之助さんの名前を出したからか、思い出したように尋ねてきた魔理沙。 「人里」 「何で」 「僕の為に」 そして詳しい事情を説明する僕。 話すのが面倒だから主に筆談で。 途中、字がうまいと誉められて少し嬉しかったり。 「へえ、成る程ねぇ……」 どうやら何かを納得した様子。 「何か?」 「いや、なんでもない」 そう言われると気になるのが人の性。 いや、もう人じゃないから妖怪の性か。 と、噂をすればだ。 僕の第六感が霖之助さんの帰宅を捉えた。 「今帰ったよ。と、魔理沙じゃないか」 「お帰りなさい」 「邪魔してるぜ」 ええ、本当に邪魔されてます。 などと頭の中では考えつつも心の中では魔理沙との馴れ合いが楽しいと感じてしまっていたのはどういうことだろうか。 別に僕は、普段は素直じゃないけどたまに見せる素直な所に魅力があるキャラではない。 そう、断じて。 「今度は何をしに来たんだ魔理沙?また品物を盗みに来たのかい?」 またか、とでも言うかのように尋ねる霖之助さん。 「人聞きが悪いぜこーりん。私は一一」 「一一死ぬまで借りてるだけ、だろう?」 先読みされる程にそのセリフは連発されているのか。 はたまた旧知の仲故か。 僕はどちらもであると予想する。 「分かってるじゃないか」 「何にせよ、借りていくのは止めて欲しいのだけどね。僕も裕福ではないのだから」 「見るからに貧乏そうだしな」 それを分かっててやっている辺り質が悪い。 いっそ霖之助さんの爪の垢を煎じて飲ませれば常識も身につくだろうか。 あ、でもこの世界って非常識が常識なんだっけ。 なんてこった。
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