初めての人里

3/26
前へ
/91ページ
次へ
「さて、そろそろ分かるかな?」 「はい」 今度は分かる。 たくさんの建物に大勢の人。 印象はおおよそ江戸時代と言った所か。 何やら見慣れない文化もあるようだが。 里の入口に立っているのがきっと警備の人達だろう。 なんて考察しているうちに人里に着き。 「ああ、霖之助さんか。お疲れ様。その坊主が例の?」 「はい、そうです」 話しかけてきたのは警備の人達が一人、大柄で、おやっさんと呼ばれてそうな男性。 ごわついたヒゲがまた素晴らしい漢らしさを演出している。 「こりゃまた貧弱そうな坊主だなぁ」 そう言いおやっさんは僕に接近。 なんと片手で僕を持ち上げてしまった。 「軽いなぁ坊主。ちゃんと飯喰ってんのか?」 「はい」 「ならもっと飯を喰わなきゃでけぇ漢にはなれねぇぞ」 がっはっはと豪快に笑いながら僕を下ろすおやっさん。 正直、こういうタイプの人は苦手である。 「これから僕達は予定がありますので、また後ほどお伺いします」 ここで霖之助さんの助け船。 ナイスです。 「おうそうか!んじゃあまた後でな、坊主!」 「……はい」 おやっさんは再び豪快に笑うと、大きく手を振って僕らを見送ってくれた。 「さて、じゃあはぐれないようにしっかりついてくるんだよ」 「はい」
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加