初めての人里

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居間へ戻ると既に霖之助さんが戻っていた。 どうやら台所も立派だったらしく、少し羨ましがっている様子だ。 「どう?この家は気に入ってくれた?」 「はい」 「なら良かった」 むしろ何処に不満を感じればいいのだろう。 掃除が大変そうな所だろうか。 そして少し会話をした後、おばさんの新居に戻り。 「では、私たちはそろそろ次の場所へ行くとします」 「ああ、仕事を見に行くんだったね。気をつけるんだよ坊や」 「はい、ありがとうございます」 僕たちは次の場所を見に行くこととした。 一礼し、おばさんの新居を後にする。 「主人を宜しくおねがいしますー!」 大きな声に振り向くと、後ろでおばさんが手を振っている。 しかし…… 「主人?」 とはなんぞや。 前に向き直り、頼れる兄貴分とも言える霖之助さんに尋ねる。 教えて、霖之助さん。 「ああ、例の荷物運びの仕事があっただろう?あれはあの人のご主人の店での仕事なんだ」 なんと、家だけではなく仕事までもくれるとは。 あのおばさんとその旦那さんにも頭が上がらなさそうだ。 「その店はここから近いから、次はそこに行こうか」 「はい」 で。 「大きい……」 「ああ、僕も見習いたいものだよ」 そこには周囲の建物より明らかに大きな店。 お客も多く、かなり繁盛しているご様子。
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