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客で賑わう店の中に入り奥に進んで行くと、店番と思しき若い男性が座っているのが目に入った。
「すみません。この店のご主人はいらっしゃいますか?」
「はい。旦那様は今店の奥のお部屋で仕事をなさっています。森近様でいらっしゃいますか?」
「はい。荷物運びの仕事の件で訪ねてきたのですが」
「やはりそうでしたか。旦那様よりお伺いしております。少々お待ちを」
男性はそう言って店の奥へと入っていった。
数分後。
「お待たせ致しました。こちらへどうぞ」
男性が戻ってきて僕たちを奥に招き入れてくれた。
廊下を進む男性の後ろを付いていく。
やはり大きな店だけあって部屋の数も多い。
掃除も行き届いていて、たまに見掛ける調度品も違和感なく雰囲気に溶け込んでいる。
僕がそんな風に感嘆している内に、やがて男性はある部屋の襖の前で止まった。
きっと襖の向こうにいる丸みを帯びたおじさんがこの店の、そしてあのおばさんの旦那さんなのだろう。
「旦那様、森近様方をお連れしました」
「どうぞ」
「失礼します」
「失礼します」
襖を開けてくれる男性。
霖之助さんが入っていったので僕も急いで中へ入る。
「よく来てくれました。私がこの店の主人です。」
丸みを帯びたおじさんは挨拶と共に手を差し出し握手を求める。
「森近です。先日はお世話になりました。ほら、琢磨君も挨拶を」
握手を受けつつ僕に挨拶を促す霖之助さん。
緊張で挨拶を忘れる所だった。
「初めまして。東海林 琢磨です」
おじさんは僕にも握手を求めてきたのでその手を握る。
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