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「ふむ、本当に何も感じていないのかい?」
僕の手を握ったまま問い掛けてきたおじさん。
僕の感覚の事を言っているのだろうか。
「はい、感覚はありません。でも、分かります」
ちなみに今のでも僕にしては大分長く喋った方。
まだうまく話せないから、長い会話は極力控えているし。
「ふむふむ成る程」
漸く手を離して貰えた。
「ではこれは動かせますかな?」
僕の能力を確かめたいのか、今度は今の今まで仕事に使っていたであろうペンを指差し、再び問い掛けてくるおじさん。
特訓もしているからその程度なら全く問題はない。朝飯前だ。
僕は能力でペンを動かして空中に浮かせる。
するとおじさんは驚いたようで。
「ほうほうほうほう!いやはや、これは驚きましたなぁ!触れずとも物を動かせるとはお聞きしましたが、まさか浮かせることも出来るとは!」
と、目をその体形のように丸くして、中々のオーバーリアクションを披露していただけたのだった。
そして少しテンションが上がってしまったのか。
「ではあれは動かす事が出来ますかな?」
更にリクエストをいただいた。
そしてその指の先には。
「……達磨?」
そう、達磨。
それも僕よりもずっと大きく、おじさんよりもずっと丸い見事な巨大達磨だ。
それが部屋の隅に圧倒的存在感を以って鎮座しているのである。
いや、部屋に入る前からその存在に気付いてはいたけれども。
自分で言うのもなんだが、まさかそれを僕みたいな見るからに非力そうな少年に動かさせるとは普通思わないだろう。
しかも、ペンからのハードルの上がり方が異常過ぎないだろうか。
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