プロローグ

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異常は離陸してすぐに起こった。 機体が激しく揺れ、最早立つこともままならぬ状況。 そしてそのまま飛行機は森に墜落。 だが不幸中の幸いというよりむしろ不幸中の不幸と言うべきか、機体が原型を留めぬ程の衝撃にも関わらず、気を失い、更には遠くまで飛ばされはしたものの、僕は生きていた。 そう、僕だけは。 家族は皆即死。 その気配を衝撃で遠のく意識が察知してしまっていたために考える必要もなく理解出来た。 目を覚ました後暫くは何が起こったのか理解出来ずに混乱していたが、思考を取り戻すと共に襲う現実。家族の死。 しかし何故なのか、涙は一滴たりとも落ちることはなかった。 僕はその時それを現実として確かに認識していたはずだが、実際は受け止めきれていなかったのかもしれない。 あるいは、悲しむ暇さえなかったのかもしれない。自身の在りかが、どことも分からぬ山奥深くとおぼしき場所では命の危機であるから。 とにかく、僕はなんとか生き延びなければならないと考え、少しでも体を動かそうともがいた。 自身に変化が起こっていることに気が付いたのはその時だ。 周囲の様子が以前に比べ遥かに鮮明に感じられたのだ。 それは五感で感じるものに近いが、それとは明らかに異なる新たな感覚。 周囲を感じるというよりは、直感的に理解すると表現する方がしっくりとくるだろう。 そして更にだ。 まるで他人の身体を動かしているようではあるが、多少なりとも身体を動かせるようになっていた。 声も僅かにだが出る。 死が目前にまで迫ったが故に身体が足掻いた成果かどうかは分からないが、これは僕に生き延びる希望を見出ださせたのだった。 そしてそれが数週間前。 秋が色めく森の中でのことだ。
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