初めての人里

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仕事場となるのは店の倉庫で、不便なことにそれは店からは少し離れた所にあるそうだ。 よって現在、倉庫に向かって某RPGのように並んで外を歩いている次第だ。 体感時間でおよそ5分程経ったころだろうか。 そこまで長く歩きはしなかったが、漸く倉庫に到着した。 やはりあの店の倉庫だけあって大きい。 「ここが倉庫です。荷物運びはここと店を何度も行き来することになります。仕事は主に店で雇っている小僧が行っています」 そう言って男性が指差す先には、米俵を載せた荷車を引いて倉庫から出て来る僕より小さい少年の姿があった。 「重そうですね」 思わず呟く。 「はい。彼らにはかなりの重労働でしょう。一応それなりの数は雇っていますし大人もいるにはいるのですが、運ぶ数も距離もありますからね。あまり雇うと人件費も馬鹿になりませんし」 つまり一人で複数人分の働きが期待出来る僕はコスト削減として魅力的と言う事か。 納得である。 「仕事を簡単に説明しますと、まず朝の決まった時間に倉庫に集合。運ぶ物が書かれた紙が前以て置いてありますのでそれを確認し、荷物を大八車で店まで運ぶ事になります。何か質問は?」 「大八車とは?」 「先程の小僧が使っていた荷車です」 「ありがとうございます」 成る程、あのリアカーの進化前みたいな物の事か
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