初めての人里

12/26
前へ
/91ページ
次へ
「他には何かありますか?」 「仕事が終わるのはいつ頃ですか?」 むしろ僕が本当に聞きたいのは大八車よりこちらである。 「ふむ、日によってばらつきはありますね。一応朝から始めてはいますが最低でも昼は過ぎるでしょう。先程申し上げましたように数が数ですから。米俵と酒樽は特に時間がかかります。」 再び通り掛かった小僧の挨拶を手の動きで返しつつ簡潔な説明をしてくれた。 「他には?」 「何人で働いているのですか?」 これも聞いておきたい事だ。 「大人の男が二人に小僧として働いている子供が7人ですね」 その人数でその速さか。 これは努力すれば倍近い速さで仕事が出来るかもしれない。 「他には何か?」 ここで今まで黙っていた霖之助さんが手を上げる。 「給料はいくらですか?」 これはまた随分と突っ込んだ質問で。 だけど確かにそれは聞かねばならない事だろう。 「小僧の賃金が一日に百二十文。大人には他の仕事も担当させているので一日に二百四十文ですね。これでも高い方ですよ」 まさかの文。 まずい、全く価値が分からない。 と内心で悩んでいると。 「あそこに見えるうどん屋で作っている一番安いうどんが確か十八文だよ。」 気配り上手なイケメンこと、霖之助さんが見事な助け舟を出してくれた。 現代で学校帰りにあった食事店の安いうどんが確か270円だったから…… 一文が15円換算かな。 つまり子供が日給1800円で大人が日給3600円か。 現代の感覚では大分安く感じるがこっちは物価も安そうだし恐らく妥当な金額なのだろう。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加