初めての人里

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「他には質問はありませんか?」 僕としてはもう質問することは無いが。 霖之助さんはどうかとそちらを向くと、どうやら霖之助さんも質問は無いようだ。 「ではこれで説明は終わります。また何か分からないことがありましたら遠慮なく聞いて頂いてかまいません」 「ありがとうございます」 本当なら他の仕事で忙しいでしょうに。 「いえいえ。琢磨君が雇われてくれた時の利益を考えれば軽いものですよ」 どうやら僕は随分な評価を受けているようです。 それはもう身にあまる程に。 でもまあとりあえずは説明も聞いたし、後は戻るだけかな。 「さて、案内も済みました事ですし、戻るとしましょうか。ああ、そうだ。戻るついでに仕事を体験してみますか?」 おお、流石は商人の下で働く人。 無駄が無いと言うか何と言うか。 でも折角だ、やってみるとしよう。 「はい、やります」 「ではこちらへ」 今度は倉庫の中へと案内された。 そして中に入ると。 「ああ、そこの二人。」 丁度大八車に荷物を括り付けていた小僧が二人。 やはりこの男性は身分的に上にいる方らしく、話し掛けられた二人は慌てたように返事をした。 「後運ぶ荷物は何が残っているんだ?」 「ええと、米俵が15俵、酒樽が10樽に野菜や小物が少しです」 「今からオイラが野菜と小物の残りの分を運ぶんです。」 「ふむ、昼も既に過ぎているからそんなものだろう」 もうそんな時間だったのか。
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