初めての人里

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「では琢磨君。残りを持てるだけ頼めるかな?」 「はい」 まずは米俵からいこうか。 僕は米俵に近付く。 実際は近付かなくても能力の効果範囲にはあるのだけど、この方が雰囲気あるじゃないか。 「あの、番頭さん」 「なんだ?」 先程の小僧の一人が案内の男性に話し掛けているのが聞こえる。 番頭という役職なのか、あの人。 「あの二人の兄さん、新しく雇った人ですか?」 「いや、違う。が、今米俵の近くにいる琢磨君という子はもしかしたらお前の仕事仲間になるかもしれない。だから覚えておきなさい」 何だろう、これが外掘りから埋められると言うやつなのだろうか。 まだやるかは決めていないと言うのに。 「あの兄さんがですか?……番頭。正直オイラはあの兄さんが米俵を運べるとは思えないんだけど……」 悪かったね、貧弱そうで。 「こら、口を慎め。」 「すみません、番頭」 「とにかく見ていなさい。きっと驚くぞ」 その言葉に会話に参加していなかったもう一人の小僧もこちらを注視する。 じゃあ期待されているようだし、そろそろ始めようか。 意識を米俵に集中。 そして、動かす。 一つ、また一つと宙に浮く米俵。 後ろで小僧が驚きの声を上げている。 一つ、更にもう一つ。 そして一一
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