初めての人里

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「うわー……」 「オイラ、こんなん初めて見たよ……」 「これは想像以上ですね……」 「特訓の成果だね。琢磨君」 結果。 米俵は愚か、酒樽まで全部浮かせてしまった。 うむ、自分でも予想外だ。 しかも、重さの影響がないとしたら、今まで特訓で同時に動かした石の数的にまだ余裕があることになる。 これはチートだな。 荷物運びチート。 いや、自分で言って何だけどショボいからやめよう。 チートではなく自分の努力の結果だし。 「番頭、本当にこのお兄さん雇っちゃうんですか?」 「オイラ達の仕事が……」 僕の能力を見てクビにならないか心配になったのだろう。 二人の少年は不安気に番頭さんへ尋ねていた。 「確定はしていないけどね。まあ彼を雇ったからと言ってクビや減給にされる事はないだろうから安心しなさい」 優しい声で答え返す番頭。 僕ももしこの仕事をする事になったら少し自重した方がいいかもしれない。 「良かったー」 「なら安心だよ」 二人は安心した様子だ。 かと思えば突然、二人は僕に寄って来た。 「兄さんすげーな!妖怪か何かかー?」 「ねぇ、一緒に働こうよ、お兄さん!」 僕にしがみつく少年二人。 米俵と酒樽は危なくないように僕の後ろに浮かせて整列させてある。
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