初めての人里

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「慧音先生」 「何だ」 「先生は妖怪ですか?」 「!」 これも霖之助さんに聞いたことだが。 満月は妖怪にとって特別な意味があるらしく、満月の夜には妖怪達の力が増したり、気分が昂揚したりするとか。 かく言う僕も最近の満月の夜に不思議な昂揚感と能力の冴えを感じていた訳だ。 だから慧音先生が妖怪ではないかと思ったのだ。 「いや、失念していた。満月が妖怪に大きな影響を与えるのは常識だと言うのに」 つまり外界の非常識という事か。 「出来れば自分で言いたかったのだが仕方ない。確かに私は半獣ではあるが獣人だ。種族はワーハクタク」 そう言われても何の妖怪か全く分からない。 半妖の霖之助さんとはまた違うのだろうか。 「分かり難ければ、人狼のようなものだと考えてくれて構わない」 成る程、理解した。 つまり満月の度に慧音さんは毛むくじゃらになるのか。 「別に姿形が大きく変わったり理性が消えたりする訳ではない。」 何だそうなのか。 なら安心だ。 「ただ、知識を得る代わりに少し人格が変わってしまうんだ」 「そしてその人格に問題が一一」 「一一あると言う訳だ。だから仕事が減ればマシになると思ったのだが」 そこで暫しの沈黙。 ちなみに今まで空気だった霖之助さんはぼんやりと外を眺めている。
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