初めての人里

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それから幾つか言葉を交わし、そろそろ里も見て回りたいので失礼する事にした。 しかし、何だか申し訳ない気分だ。 少しくらいなら手伝ってもいい気がするが、まだ店の仕事を始めてもいないのに手伝いを提案するのもよくない。 後日、ある程度仕事に慣れた所で申し出て了承されたら手伝う事としよう。 「今日は本当にすみませんでした」 「いや、気にしないでくれ。それより仕事を頑張るんだぞ」 「ありがとうございます。ではこれで」 「ああ。ではまたな」 慧音先生に見送られ寺子屋を後にする僕と結局まともに喋ることの無かった霖之助さん。 と思っていたら霖之助さんは急に話しかけてきた。 「大分うまく話せるようになったね、琢磨君」 「そうですか?」 と言うよりは話さざるを得なかっただけだと思う。 しくじれば頭突きだし。 「黙っていて正解だった」 「故意ですか」 何という策士。 「だが、うまく話せないというのは良くないだろう?」 「それはそうですが」 「それなら別にいいじゃないか」 いや、そうなんですがね。 何処か一片納得いかないものがあるというか。 ま、いいか。 「それより、次は里を案内するよ。警備の仕事を断る事は帰り際に伝えればいい」 「そうですね」 さあ、待ちに待った里の案内だ。
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