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「さて、琢磨君。もう一通り案内は済んだが、まだ見たい所はあるかい?」
早々に団子を平らげた様子の霖之助さんが尋ねてきた。
気になるものは幾つかあったが、どうせ人里に住む事になるのだからわざわざ今日見に行く必要もないだろう。
結論と同時、僕も最後の一本を食べ終えて串を置く。
「いえ、今日はもういいです」
「そうか、では帰ろうか。」
「はい」
満足感と共に茶屋を出る。
入口までの道にもまた色々と気になる人や物がいたりあったりしたがそれはスルー。
流石にもふもふしていそうな尻尾のたくさんある女性の姿を確認した時は目を、いや、第六感を疑ったが。
流石幻想郷である。
人里の入口に近付くとあのおやっさんの姿を発見。
報告の為に近付く。
「おう、お二人さん。仕事はどうだった?」
その大柄な身体をこちらに向けるおやっさん。
当然僕は見上げる形となるはずだが、如何せん目を使わないのでおやっさんの胸辺りに顔が向く。
「すみません。仕事決まってしまいました。」
早めに切り出す。
「なにぃ、決まっちまったのか!まだうちの仕事を見てねぇじゃねぇか」
「本当にすみません」
頭を下げる僕。
「まあ別にいいさ。もし坊主がうちに来てたらそのひょろいもやしみたいな身体、俺ぐらいにまで鍛えてやったんだがな」
勘弁して下さい、僕は熊にはなりたくないのです。という言葉は開かずの口の中に閉じ込めておく。
その後は話す事も無く。
僕たちはおやっさんに別れを告げ帰路を辿るのであった。
さて、明日からは忙しくなりそうだ。
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