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仕事が決まってから四日。
引っ越し祝いに頂いた家具も既に人里へ運び終わり、僕は残り僅かとなった居候生活を過ごしている。
香霖堂を出るのは明日の予定だ。
今は店の中を掃除している所である。
そして、迷惑な来客を感じとったのは、塵取りでゴミを集めて捨て終わった時の事。
「邪魔するぜー!」
喧しい声と共に店へと突入してきたのは自称普通の魔法使い霧雨 魔理沙。
僕の幻想郷での始めての友人だが、その手癖の悪さは幻想郷でもトップに入るだろうと、まだ幻想郷をよく知らない僕でも断言出来る。
いくら非常識が常識だとは言え、そんなホイホイと泥棒がいてたまるか。
「邪魔するなら帰ってくれ」
「おいおいそんな事言うなよ、こーりん」
対して答えるは我が恩人霖之助さん。
しかしそんな言葉を無視してズカズカと侵入して来る魔理沙。
掃除したばかりの床の上を歩いていき、テーブルの側の椅子に腰を下ろす。
箒は外に置いてあるようだ。
「何をしに?」
「お茶をしに」
そんなやり取りをする二人。
ほんの二日前にも同じやり取りがあったばかりなのだが。
「おい琢磨。お前もう少しでここを出るんだっけ?」
掃除道具を片付けている所を話しかけられた。
「うん、明日に出る」
「明日か。随分と早いな」
「そう?」
言って、僕も椅子に座る。
「ほら、お茶だ」
「おっ、悪いな」
「ありがとうございます」
僕の分のお茶まで用意してくれた。
流石気の利くお人だ。
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