常連、香霖堂にて一堂に会す

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「やるなら外でしてくれ。店が壊れたら敵わない」 流石に気が気でなくなったのか口を挟む霖之助さん。 僕では今の状況で割り込む程の勇気が出ないので尊敬する。 「そんなの分かってるわよ。それとも私が店の中でドンパチやるような非常識人に見える訳?」 直前までやる気だった癖に何を言うか、この腋巫女は。 何気に矛先が霖之助さんにまで向いてるし。 「いや別にそんなつもりでは……」 「じゃあどんなつもりよ」 「そうだ。はっきり言った方が身の為だぜこーりん」 何故か追い詰められている霖之助さん。 困り果てた様子で僕に視線を送ってくるが、残念ながら僕にはあの二人を止められる自信はない。 だから僕は首を横に一一振ろうとしてやめた。 それで、いいのか。 今こそ恩を返す時ではないのか。 ここは男として退けない、退いてはならない場所なのだ。 悪鬼羅刹と化した目の前の二つの異形に立ち向かい、我が恩人を救い出す事が僕の使命。 さあ立ち上がれ、僕の勇気よ! いざ、出陣! 「あの……」 「何よ!」 「何だ!」 「何でもないです」 ごめんなさい、無理でした霖之助さん。 だって動きが恐すぎるんですよ。 一瞬でこちらを振り向いて、その狂気に満ちた眼光に晒された日にはもう、どんな勇者であろうと逃げ出すのではないだろうか。
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