常連、香霖堂にて一堂に会す

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造る、要するに対象の捏造。 重要なのはその対象だ。 だがそれはこの作戦を思い付いた時点で考えてある。 恐らく、この幻想郷にも生息しているであろう生物。 そう、奴だ。 圧倒的な数と異常な耐久力を誇る太古より生きる神秘の生物。 数多くの人々を阿鼻叫喚の渦に陥れてきたその一族に付けられた異名、それは。 『黒い悪魔』 言ってしまえばゴキブリである。 都合の良い事に、品物に隠れている床と壁の間に隙間もあることだし、そこから侵入した事にしよう。 ではセカンドミッション、スタートだ。 「皆、動かないで」 「琢磨君何を……?」 「黙って。奴がいるから」 あくまで冷静に、そして、不安を煽るような抑揚の声で言う。 「何言ってるんだ琢磨。別に何もいないじゃないか」 「妖怪の気配も感じないし、そもそも私に気付かれない妖怪なんてそういないわよ」 と言いつつも警戒を解かない二人。 そう、それでいい。 「妖怪じゃ、ない」 「は?じゃあ何なんだよ」 「勿体つけずに早く教えなさい」 再び殺気立つ二人は僕の顔を睨みつける。 しかし僕は先程音があった方を向き微動だにしない。 それも全くの無表情で。 まるで、人形のように不気味な沈黙を貫いて。
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