常連、香霖堂にて一堂に会す

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「おい、どうしたんだ琢磨」 「ちょっと何とか言いなさいよ」 「琢磨君、一体何が?」 反応のない僕を不審に思ったのか僕に詰め寄る三人。 よし、このタイミングだ。 僕はわざとゆっくり、人間らしさを感じさせないような動きで首を三人に向ける。 そして、これまた無表情で僕はその一言を口にする。 「黒い、悪魔」 瞬間、一気に青ざめる魔理沙。 怖いもの知らずな印象を受ける霊夢さえもが血の気の失せた顔をしている。 流石は黒い悪魔、名前だけでこの効果とは恐れ入った。 残念ながら霖之助さんまで青い顔をしてしまっているが。 「ちょ、な、ゴキ、キ?」 最早支離滅裂な魔理沙。 略して最離沙。 「落ち着きなさい魔理沙。琢磨、奴は何匹いる?」 魔理沙とは反対に冷静に対処する霊夢。 「建物内に一匹だけ」 「じゃあまだ住み着いてはいないのね。ならここで叩き潰す!」 これはまずい。 「待って」 慌てて霊夢を止める僕。 表情に焦りを出したりはしないけど。 「今やらなきゃこっちがやられるのよ、止めないで」 最初の目的はもう忘れさせる事が出来ただろうし、そろそろ引き際かな。 「引き返してる」 「は?」 「隙間から、外に向かってる」 無言の時間。 まるで嵐が過ぎるのを待っているかのように動かない三人。
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