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「もう大丈夫、いなくなった」
本当は存在すらしない黒い悪魔の撤退を告げると、三人は深い安堵の溜息を付いた。
「まさか、ゴキブリが出るとは思わなかったよ」
「この店の有様で出ない方がおかしいわよ。掃除くらいしっかりしなさい」
先程の張り詰めた空気はすっかり無くなり和やかな雰囲気へ戻り始める店内。
霖之助さんまで騙す結果にはなったが、敵を騙すにはまず味方からとも言うし、霊夢の闘争本能を抑える事も出来たのだから上々の結果だろう。
「いや、今回は流石の私でも焦った。だけど奴も私には敵わないと分かったんだな。尻尾巻いて逃げて行ったぜ」
「よく言うわ」
奴がいなくなったのを良いことに虚勢を張る魔理沙。
霊夢の呆れた視線も受け付けない図太さも取り戻してはいるが、その額に流れる冷や汗の名残が先程の焦り様を雄弁に物語っている。
「しかしあんたの能力って便利ね。あんな小さい奴の気配が分かるとか、完全に第六感の範囲から逸脱してるじゃない」
「自分でも何度も思ってますよ」
頭の中に周囲の地図があるようなものだからね。
始めは気配とか直感とかで察知する程度の領域だったからそう呼んでいるだけで。
「ま、そんな能力無くても私がいれば奴らになんか気付かなくても向こうから逃げていくから安心だな」
「その自信は何処から来るのよ」
再び虚勢を張ると共に、今度は腰に両手を当て胸まで張り出した魔理沙。
そんな風に、決してあるとは言えない物を張られても哀しくなるだ……おっと誰か来たようだ。
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