常連、香霖堂にて一堂に会す

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集中して辺りを探る。 お、これなんか良さそうな物じゃないか? 「これはどうですか?」 僕が能力で浮かせて渡したのは木の箱に入ったオルゴール。 どんな曲を奏でるかは分からないが気品のあるお嬢様に合いそうな気がする。 「これは、オルゴール?」 「どうですか?」 「気に入って頂けるかは分からないけど、一応買わせて頂くわ。他にも探してもらえる?」 「はい」 買ってはくれるそうだか微妙な反応か。 他には…… 「これはどうですか?」 「いえ、本なら館にも沢山あるから結構よ」 駄目か。 これは難しい。 仕方ない、駄目元でこれはどうか。 「ならこれでは?」 「これは?」 渡したのは黒い悪魔事件の時、僕に閃きを授けてくれた古いボードゲーム。 「それは外界のボードゲームだね」 霖之助さんが説明する。 「成る程、これならいいかもしれないわ。支払いは金貨で構わない?」 「ああ、大丈夫だ」 気に入っちゃったよ、駄目元だったのに。 しかも金貨って。 流石メイドを雇うだけあってセレブ感が漂っている。 しかし聞いたお嬢様の印象とそのボードゲームは合わない気がするのだが。 僕より少し年上くらいを想像していたのだが、もしかしたら年下なのかも。 「確かに代金を受けとったよ。また買いに来てくれ」 「ええ、ではまた」 「毎度ありがとうございました」 目的を達した十六夜さんは帰っていった。 未だにお茶を飲んでいる他の二人の見送りは手を振るだけに納まっている。
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