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「わ、私は用事を思い出した。残念だが今日は帰らせてもらうぜ」
そう言うが否や、魔理沙はそれはもう物凄い勢いで飛び出していった。
きっと帰ってから悪魔に怯えながら片付けをするのだろう。
「やるじゃないか琢磨君」
「いえ、それ程では」
実際、黒い悪魔のお陰である部分が大きい。
「しかしあの時は焦ったよ。君がやたら怖い顔でゴキブリが出たなんて言うから」
おお、無表情が役に立ったようだ。
とりあえず、霖之助さんには本当の事を言っておこう。
「すみません。あれ嘘です」
「何、そうだったのか?」
「はい」
やられたよ、と首を振り我が恩人は椅子へ座り込む。
「無表情だから嘘かどうかなんて全く分からないね。参ったよ本当に」
「すみません」
「いやいいさ。お陰で助かったんだから。しかし、あれを嘘と見抜けるのは幻想郷の賢者かさとり妖怪くらいなものだろうね」
片方は知らないが、幻想郷の賢者というのは前に聞いた、霊夢とは別に結界を管理しているという方か。
いつかお会いしてみたいものである。
「さて、そろそろ夕食にしようか」
「はい」
その夜、魔法の森の方から悲痛な叫び声が聞こえた気がした。
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