人里、再び

3/10
前へ
/91ページ
次へ
「だからおやっさんはやめろっちゅうに。とにかく、里の平和は俺らに任せて坊主は身体でも鍛えてな」 そう言って豪快に笑うおやっさん。 このまま話しているのも僕のコミュニケーション能力の向上的にも悪くないが、今は家へ向かうとしよう。 「では急ぎますので、また今度」 「おう、たまには身体鍛えに来いよ」 華麗にスルーして先に進む。 その後家に向かう途中で、以前僕が引っ越しの荷物を浮かせて運んでいるのを珍しく思って話し掛けて来た事のある人たちと出会って会話をした。 皆、僕が妖怪と知っても殆ど気にしない人たちである。 里の人は妖怪を怖がっていると思っていたけど、考えると仕事の見学に来た時に多くの尻尾がある女性が里の中に居たからそんな珍しいものでもないのだろう。 何にせよ知り合いが増えるのは嬉しい事だ。 そうしているうちに家に到着。 僕はこれから住む事になるそれを見上げ、来る度に抱く感想を今までよりも強く抱いた。 ああ、本当に立派な家だなぁ。 この家が僕の物になるなんて。 もし今僕に表情があればきっと笑みが抑えられなかっただろうけど、スキル鉄面皮を強制的に会得している僕はポーカーフェイスを維持する事が出来る。 「ただいま」 で、いいんだよね? 慣れるまでは違和感があるから思わずお邪魔しますなんて言ってしまうかも。 とは言え僕以外誰もいないからその恥ずかしい間違いを聞かれる心配はないか。 同時にお帰りを言ってくれる人もいない訳ではあるけど。 いつかペットでも飼おうかな、一人は寂しいし。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

93人が本棚に入れています
本棚に追加