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限界で靴を脱ぎ居間へ移動する。
まず目に入ったのは中央にある炬燵。
この家にある家具は全てそうであるが、これも霖之助さんに引っ越し祝いとして頂戴した物である。
魔力燃料とやらを動力源に熱を発生させるそれは、これから寒くなる幻想郷には必須のアイテムだ。
そのうち、永遠の相棒であるミカンも上に乗せてやろう。
それならペットは猫になるのかな、相場的には。
あれ、でもよく考えると僕は寒さを感じないから意味がない?
いや、感じなくても身体は壊れるから暖かくしないと駄目か。
身体の不調が精神に影響を及ぼしたら困るし。
精神や概念的なものを依り所として存在する妖怪なら尚更だ。
それ以前に僕は妖怪とは名ばかりで、一部の欲と感覚がないだけでそれ以外に普通の人と違う部分は無い……はず。
まあ別にそんなややこしい云々は置いといて暖かくすれば良い話か。
まずは炬燵に入ってのんびりしよう。
と思ったが。
大変だ、暖かさを感じない。
正確に言えば暖かいことは第六感で理解出来るけど、何故か心地良さとして感じない。
それはつまりあの天国に昇るような幸福感を味わえないと同義。
そんな炬燵なんて、炬燵じゃない。
ここで感覚が無いのがこれ程の障害になるとは。
そして、第六感も万能ではないと。
残念無念。
とりあえず、気を取り直してこの家の元の持ち主である例のおばさんの所に挨拶でも行こうか。
今日から住むんだからそれくらいするのは当然の礼儀。
てな訳で行きましょうか。
さらば、暖かいけど暖かくない炬燵よ。
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