幻想入り

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それにしても本当にどうしようか。 自分が何かはこの際後回しにしておくとして、目先の問題としてこれからどうすればいいのかという難題が生じるのである。 これまでは身体を動かす練習をしていれば良かった。 しかしこれからは違う。 新たな目的が必要だ。 「まず……動く……?」 とりあえずは歩き周りつつ考えることにしよう。 そう考え、今まで座っている状態だった自分の身体を動かして立ち上がらせる。 そして第六感で周囲を探る。 頭の中に浮かび上がる鮮明な周囲の様子。 色、音、匂い。 この最近で強化された僕の第六感は、およそ20メートル半径にある物ならば、たとえ後ろにあっていようとも、たとえ陰に隠れていようとも把握できる。 最早第六感とは別物である気もするが、それもまたどうでもいいことだろう。 そんなこんなで歩き始めた僕。 僕の第六感がそれを捉えたのはそれから暫くしてからことだ。 「か…べ…?」 壁。 比喩ではなく文字通りの意味で、色のない大きな壁のようなものが僕の前に立ちはだかっていた。 第六感が知らせる壁の向こうの様子は全く分からない。 これは一体何だろうか。 答えの出ない疑問。 ただ、自分の第六感が警鐘を鳴らしているのだけは理解できる。 一一触れれば、ただでは済まない。 まるで、そんな風に言われているようで。 でも同時に好奇心もあった。 僕は愚かにもそれに従ってしまい。 壁に、触れた。 途端。 世界が歪み、意識が飛ぶ。 ああ、畜生。 一 一一 一一一 一一一一 一一一一一
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