人里、再び

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帰る途中にご飯の材料を買おうとしてお金を持っていない事に気付いて軽く絶望して。 僕は自分の家へと帰って来た。 陽はもう沈もうとしている。 「ただいま」 当然返事は無い。 それでもただいまと言ってしまうのは何故だろうか。 靴を脱いで、居間へ入らずにそのまま自分の部屋へ向かう。 広いと落ち着かないので部屋は一番小さい部屋を選んだ。 部屋に入るとあるのは幾つかの家具。 そしてメイドイン霖之助さんの僕と同じくらいの高さのスタンドライトが二つ。 ちなみに他の部屋にもある。 これらもまた魔力燃料を元に光を出すらしい。 魔力燃料は香霖堂で買えるとの事。 やはり仮にも霖之助さんも商人か、抜け目が無い。 僕も香霖堂を訪ねる理由が出来て嬉しくもあるが。 特に必要はないがライトを点けてみると、蛍光灯のように数秒細かく明滅した後、明かりが部屋を照らした。 でも点けたはいいけどすることがない。 今日は既に飯抜きが決定したから食事もしない。 仕方ないから香霖堂で読んでそのままもらって来た本でも読もう……じゃなくて。 考えてみればまだ風呂に入ってない。 思い立ったが吉日、早速用意しよう。 風呂の沸かし方は実は既におばさんに聞いてあったから簡単に出来た。 しかし、忘れていた。 僕、暖かさも感じられないんだった。 畜生。 そんな訳で早いうちに永遠亭とやらにお邪魔しよう。 そう、決意した夜であった。
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