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「紹介しよう。彼は東海林 琢磨君だ。今日から皆と共にここで荷物運びの仕事をする事になった」
「よろしくお願いします」
今の会話から読み取れる事だが、現在荷物運び人一同の前で自己紹介中。
昨日旦那様の所に挨拶に行き今日から仕事を始める事になった僕は、朝の仕事が始まる前に自分で自己紹介を済ませてしまおうと思っていたのだが、何故か番頭さんがわざわざ皆を集合させてまで僕の紹介をしてくれている訳だ。
「前に見た者もいると思うが彼は非常に有能だ。喜べ、仕事が早く終わるぞ。」
やたらと僕にプレッシャーをかけてくる番頭。
その彼の言葉に疑問をもったのか、前回訪れた際には見掛けなかった小僧の一人が手を挙げる。
「番頭。その兄ちゃんが入ったからってそんなに仕事が早く終わるんですか?俺にはその兄ちゃんが筋肉質には見えないんですが。しかも目ぇ閉じてるし」
「彼の有能さは仕事が始まれば分かる。とは言え彼も新米だ。分からない事も多いだろうから皆で教えてやってくれ」
しかしずっと思っていた事だけど番頭さんは外部の人と内部の人とでは全く態度が違う気がする、と言うか違う。
僕が正式に働く事が決まってから僕への話し方が部下へのそれに変わったし。
最初は丁寧な人かと思っていたけど今は厳しい上司な印象である。
「さて、時間が惜しい。そろそろ仕事に取り掛かれ」
僕の自己紹介の為にわざわざ使った時間は惜しくなかったのですか番頭。
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