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「番頭が見れば分かると言っていただろう。さあお前も早く仕事に取り掛かるんだ」
「……分かりました」
班長にそう言われては何も言い返す事など出来ず、小僧は僕を恨めしげに一瞥してから他の皆を追っていった。
なんか、ゴメンね。
「じゃあ新米君はまず米俵から頼む。心配しなくてもきっと米俵も仲間のよしみで喜んで協力してくれるさ」
どちらも米だけに、か。
洒落がお好きなようで。
「運ぶだけでいいんですか?」
「ああ。陳列は向こうでやってくれるから大丈夫だ」
「分かりました」
では初仕事に取り掛かりますか。
今、米俵を浮かせて新たに気付いた事がある。
それは、動かす程度の能力にも重さが関係していたという事だ。
浮かばせられる数が石を浮かばせる時より少ないから気付けたのだが、今回は石と違い技術不足で操作しきれないのではなく単純な馬力不足によるものらしい。
それでも軽く五十はあるけど。
「いや、この間見た時も凄かったが今回は更に凄いな」
「そうですね」
でも、僕としてはまだ特訓不足な感じが否めない。
それはこれからもやっていくとして今は早くこれを運ぼうか。
他の皆も行ったようだし。
「では行って来ます」
「ああ」
背後に米俵を整列させ倉庫を出る。
その様子はまるで米俵のマーチ。
自分でやっててなんだが中々奇妙で面白い光景だと思う。
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