初仕事、初給料、初飛行

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挨拶が済むと途端に騒がしくなる小僧たち。 そのうち何人かは僕のところまでやって来て、やはり口々に称賛の言葉をぶつけていく。 これほど称賛されるまでに凄いことをしたとは思えないが、そこは遊びたい盛りの小僧たち、午後があいた嬉しさからなのだろう。 唯一、僕が仕事をするのに反対ぎみだった小僧でさえ、「勘違いするなよっ」なんてツンデレりながら褒めてくるほどだ。 それはさておき、仕事を早く終わらせた為にこれからすることがなくなってしまった。 別にどこか行きたい場所もするべきこともないし、これはもうゴートゥーコーリンドゥーしかないかな。 と、思っていた矢先のことだった。 ある小僧が僕にある選択肢を提示してきたのは。 「なぁ兄さん、兄さんってこれから用事ある?」 そう言うのはいつぞやの寺子屋に行きたいという小僧。 どこか不安げに僕の服の裾を掴む姿に、僕は良心の危機のようなものを感じざるをえなかった。 「特にないけど何故?」 そう尋ねると、話すのをためらうように暫く口をもごもごさせる小僧。 「あの……一緒に寺子屋に行って欲しいんだ」 「寺子屋に?」 一緒に行くって……僕は寺子屋での学習が必要なほど頭が足りないように見えるのだろうか。 「えっと、寺子屋には行きたいんだけど、その、今日初めて行くから少し不安で……」 ああ、なるほど。 不安だから着いてきて欲しいということか。 放っておくのも忍びないから着いていってあげよう。 慧音先生に少しでいいから手伝ってくれとも言われていたし。
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