初仕事、初給料、初飛行

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「いいよ、着いていってあげる」 「本当!?」 途端に明るくなる小僧の顔。 「でも僕でいいの?」 「兄さんがいれば安心だよ!」 わざわざ僕に付き添いを頼むほどだし、信頼されているのかな。 付き合いはまだ殆どないけれど。 「良かったぁ!じゃあ着いて来てね!」 「うん」 まだ残っている何人かに挨拶をして倉庫を出て寺子屋へ向かう僕たち。 里の大きな通りに出るとやはりそれなりに多くの人たちが歩いていた。 どの人も現代ではまず見ない服装だが、もう違和感を感じなくなる程度にはここに馴染んできている。 「それにしても兄さんが羨ましいなぁ」 唐突にそう呟いたのは隣を歩く小僧。 「何が?」 「あんなに凄い力をもってることがだよ。僕もあんな風に出来たらいいのに」 「でも良い事ばかりじゃない」 事実、その力の代償として沢山のものを無くしているのだから。 「分かってるけど、それでもやっぱり羨ましいよ」 「そう?」 「そう」 そこで途切れる会話。 しかし何度も思うのだが、およそ小学校中学年くらいにしては何処か雰囲気が大人びているように感じる。 きっと環境がそうさせたのだろうが、こうして会話しているとどうにも不思議な感覚がある。 僕が小学生3・4年生の頃には、僕も周りも精神的、知能的にもっと幼かった気がする。
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