初仕事、初給料、初飛行

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「こんなに頼んでもダメなの?」 「ダメったらダメ」 「ケチ―」 「ケチで結構」 といったやり取りを続ける事およそ二十分、目的地の寺子屋へ騒がしく到着した。 仕事が終わった時間からして今は丁度昼頃だろうか。 どうやら寺子屋にも昼休みというものはあるようで、外では早々と昼食を取り終えた生徒達が会話したり暴れたりしながら楽しそうに遊んでおり、教室ではまだ昼食を食べ終えていない生徒達が机を囲んでおかずをつまんでいる。 慧音先生も教室で一緒に食事をしているようだ。 「まずは先生の所へ行かないとね」 隣に立つ小僧へと声をかける僕。 が、小僧は外で遊んでいる子供たちを眺めていて話しかけられたことに気付いていない。 という訳で、ちょっと悪戯をしてやろうではないか。 まず、足元に落ちていた枯葉を浮かび上がらせて小僧の首筋に近づける。 次に、そのまま優しく撫でるように枯葉を触れさせる。 結果、小僧は奇声を発して体を数歩ほど飛び退ける。 結論、おもしろうございました。 などと、この年になって悪戯で喜んで内心で笑っている僕。 それとは対照的に、隣からは不満げな表情が。 「なにするんだよ兄ちゃん、びっくりしたじゃないか」 「ぼんやりしてたからつい」 「つい、で人の寿命を縮めないでよ」 「まずは先生に会いに行こうか」 「無視された!?」
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