序 章 炎の剣と黒傭兵

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 旅から旅の根無し草。  東西南北、津々浦々。  フリーの傭兵として世界を回る彼にしてみれば取るに足らない事だった。  雇う側と雇われる側。依頼主と金銭的な契約を結んでいる傭兵はただただ下された命令を聞いていればいい。  だが、何も全てに従う必要はない。  もしも依頼主が下したそれが、傭兵個人が持ちえる信念や思想に反することであれば契約破棄として打ち切ればいいだけの話なのだから。いくら傭兵といえど心の善悪を選択する余地はある。  ただし一度結んだ契約を打ち切るということは、それ相応のリスクを伴うものだということを理解しておかなくてはならない。  傭兵とは個人力だ。個人が持ちえる能力がどれだけ優れていて、そしてどれだけの実績を重ねているか。  対する依頼主──傭兵を雇う側は何か組織的な繋がりを持った旅団、国家である場合が多い。中には個人で雇い上げる人間もいるが極めて稀であるうえに、その背後にはとてつもない権力者がいて糸を束ねているという事もある。
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