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ウィリアムは空を見上げる。遠く離れた故郷に繋がる夜空を。
闇夜に浮かんだ金色が放つ淡い月光が心を静め、ゆっくりとゆっくりと眠りへ誘う。夜の暗がりも助けてか、その藍色ともいうべきくすんだ青と淡い月光に包まれ、ウィリアムは上下する馬車の荷台で眠りについた。
直後だった。
突如として突風が駆け抜けた。
響き渡る馬の嘶き。
ややあって荷台の前方から声が。
「何か来たぞ! おい、起きてるんだろうな傭兵!」
先に聞こえた馬の嘶きですでに目を覚ましていたウィリアムは、御者が発した怒号を耳に留めながら状況を確認する。周囲に目を向けてみれば、こちらと同程度の速度で走る複数の何かが並走するかたちで馬車を取り囲んでいた。そして微弱な月光がその複数の何かの正体を僅かに照らし出す。
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