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青い瞳に黒い短髪。左目に眼帯をしたその顔は、よく見ればシークも見知った顔だった。
「なんだ。お前かよ」
シークは思わず呟いた。
「なんだ、とは失礼だな。時間ギリギリで入って来たクセによう」
と陽気な口調でシークを出迎えたこの男は、ダン・トキトウ。
ギルド“真紅の鷹(Crimson Hawk)”の魔導師で、元情報屋のシークの旧友。
「珍しいな、お前が遅刻するなんて」
薮から棒にダンが言うと、シークは険のある顔を浮かべた。
「うるせーな。っつーか、俺が来ること知ってたのか?」
「ったりまえだ。この“地獄耳のダン”の情報網嘗めんなよ」
「…ダセーうえに、大して広まってもいねぇぞ、そのアダ名」
「何だと?んなコト言う奴には今集まってる連中の情報やんねぇぞ?」
そう意地悪そうに言うダンに、シークはぐいっと詰め寄って尋ねた。
「店の奥から順に教えてくれ」
「えー?教え“くれ”だあ?教えて“下さい”の間違いじゃねぇのか?」
一瞬調子に乗るダンの唇に、シークはどこからか取り出した針を押し当てて言った。
「よし。素直にササッと情報言うか、二度と喋れないようササッと口を縫われるか…選ばせてや―」
「よし、では店の奥の奴から順に説明させていただきます」
間髪入れずに、ダンはシークの言葉に従順になった。
シークはダンの唇に当てていた裁縫針をしまうと、ダンの説明に耳を傾けた。
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