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「うし…こんなモンだろ」
そう青年は満足げに言うと、物影に隠れていた男とレイラの元に行った。
男は青年を迎えるように、ゆっくり物影から出て来ると、驚愕の表情を浮かべながら青年に言った。
「し、信じられん…まさかアレを倒してしまうとは…」
「ああ、倒して無いよアレ」
「え!?」
「氷で一時的に動きを封じてるだけで、3時間もすれば氷が溶けてまた動き出す」
「じ、じゃあそうなる前に早くこの遺跡から出なくては!」
と慌てて身を翻し、この場から逃げようとする男を、青年は肩を掴んで呼び止めた。
「まあ待てよ。俺の仕事がまだなんだ」
「何だね!?助けて貰ったのは有り難いが、君の仕事は私には関係な―」
と言いかけている男の手から、青年はあの赤い宝石を引ったくった。
「な!?何をする!?」
そう怒鳴りながら男は宝石を取り返そうとするが、青年はひょいひょいと男の手を避けながら、男に言った。
「悪いな。俺の仕事はアンタからこの石を守り、この遺跡を封鎖する事なんだわ」
「何い!?き、君は一体?」
男が尋ねると、青年は宝石を掌で転がしながら、男に言った。
「俺はギルド“信条無き聖者達(NotCreedSaint)”のシーク・ウィザースプーンだ」
そう青年が名乗った直後、男は愕然とした様子で呟いた。
「な…すると…君が…あの“翡翠の瞳の戦士”…」
そう男が言うと、彼はニッと笑って、煙の様にその場から消えた。
それを見ていた男、探検家ダイズム・グレアムは、ただただ絶句することしか出来なかった。
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