クロとクルのくろにくるっ！

～プロローグ～

～イーストダンジョン～

「はぁっ……はぁっ……はぁっ…………」

薄暗い森の中を駆けてゆく少女が一人いた。オレンジ色のワンピースに白いエプロンを着て、ちょっぴり自信なさげな目元にエミル族独特の濃い茶色のロングヘアーが風にたなびく。

「ちょ……冗談でしょ……なによあれは……」

一際大きい大木の根元に手をつきながら一休みする少女。

「も～………いけないきのこを採りにきのこ狩りしてただけなのにぃ………大体あのモンスターってもっと奥にしかいない筈じゃん……ｸﾞｽﾝ……ｯ！……」

近くではない、だが遠くもない位置から遠吠えが聞こえてきた。更にはそれに呼応するように次々に遠吠えがそこかしこからあがる。

「あぅ………リンクされた…」

魔物は自分の索敵範囲内か何らかの干渉あるいはダメージを受けると近くにいる周りのモンスターを引き寄せる事がたまにある。

これを「リンク」と言う。

つまり、リンクされたという事は周囲の敵も一緒になって襲ってくるということだ。

それは魔物の習性によって様々だ。自分に被害が及ばなければ、例え目の前で同種が倒されても知らんぷりする魔物もいれば、集団で襲いかかってくる好戦的なのもいる。どうやら今回は後者のようだ。