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~もう夕方~
「まさかほんとに追い出されるとは思わなかったわ………」
「ね~」
両手に荷物をいっぱいに抱えてファーイーストの門の外にいたクルとたま。
「ね~、じゃない!10割あんたのせいじゃない!!どうすんのよ!?まさか10代で路頭に迷うとは夢にも思わなかったわよ!!悪い人に捕まったらどうすんの!?拉致されていかがわしい場所に売られたらとか考えないわけ!!?ぎゃーっっ!!いやぁ~~っ!!せめて結婚するまでは綺麗な身体でいたいのぉ~!!そうだ!そうよ!白馬の王子様が助けに………」
まだ続いているが、その後ろでファーイーストの門が音をたてて閉まる。
「………」
現実逃避を続けるクルを置いて、間もなく陽が沈む方角に向かって歩き出すたま。
「……あれ?」
でも途中で立ち止まると振り返る。
「あぁっ!王子様!こんな所じゃ!いいじゃないかクル。もう我慢できないんだ!!ぁあ……王子様……ん~~………ん?……………」
ようやく我に戻ったクルが夕日をバックにこちらを向こうとするたまを見る。
「………」
(綺麗………)
長い髪が風になびき、まるで踊るように振り返るたまにぼ~っと見とれていた。
「……あのね…」
「………」
「……アクロポリスって……どっち?」
「……ぷっ…」
(これがなきゃ美人で終わるのにね~……)
苦笑するクルは一歩を踏み出す。
もう前にしか道は無い。
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