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「あっちよ」
右を指差す。
「あっち?」
素直にあっちに歩いてゆくたま。
「間違えた、そっち」
逆の方向を指差してやる。
「も~………」
今度はそっちに歩き出す。
(そうよ、文句を言いながらも方向転換するのよ……うぷぷぷ…)
「ごめ~ん、こっちだったぁ♪」
一番最初にたまが歩いていた方向に楽しそうに歩き出すクル。
(まぁ……家を追い出されちゃって散々な1日だったけどさ…)
「うん……………良い天気になったね…」
(悪くないと思う……うん…)
どこか吹っ切れた様子のクルの足取りは軽い。
「ク~~~~ル~~~~……」
怨めしそうなたまが追いかけてきた。
「早く来なさいよ。しょうがないから連れていってあげる♪」
(………悪くない……よね…)
「ざぁぁぁ~~~」
この綺麗な夕焼けで雨なんか降るわけない。クルの上にだけ雨が一瞬、降るというよりは水の塊が落ちてきた。
「ひゃん!!……おまっ!そこになおれぃ!打ち首にしてくれるわぁぁぁぁっ!!!」
「や~ん」
クルを追い抜いて先に走り出すたまに、それを両手に持ったバッグをブンブン振り回しながら追いかけるクル。
(うん……悪くない…)
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