白くて冷たい

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「良いとこなしじゃないか」 僕は苦笑して言う。彼女が笑いを返すことはなく、ただつーんとしている。 もしかしたら不機嫌になってしまったのかもしれないが、彼女は大体こんな感じなので僕には見分けがつかない。もっと感情を表に出してほしいのだけど。 「感覚なんて、結局は他人に押し付けられるものでしょ?ほら、雪だよ、きれいだねーって誰かに言われるから、これが『きれい』なんだ、って子供が知るわけで。そうしてそれがいつかは自分の感覚だって錯覚していくんだと思う。だから、雪が綺麗で素晴らしいだなんて本当は大間違い」 一見正しくて、どこか悲しくて、実に彼女らしい持論だ。でも僕はそれが間違っていると言える。自信を持って言える。 「いや、それは間違ってるよ」 だから、言ってやった。
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