白くて冷たい

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彼女が眉間にしわをよせる。感情を表に出すのは稀であり、記念に写真を撮っておきたい、なんて危険なことを考えてしまった。 もっとも、それはすぐに消えてしまい、その機会は失われてしまったのだけど。そのかわり、彼女は今珍しく微笑んでいる。でも、なんとなく素直に感動できない。 「よろしければ、訂正をお願いできませんか?」 うわぁ、怖い。やっぱり怒っているらしい。 まさかきっぱりと否定されるとは思っていなかったのだろう。反論を思いっきり叩き潰してやろうという意志がうかがえる、嫌味たっぷりな言い方だ。 「かしこまりました」 仕返しの意味を込め、同じような口調で返事をする。我ながら、似合わない。彼女の方はあんなにも似合っていたのに。 「理由はただ一つ。それだけで十分」 例の口調をあきらめた僕は、そう言って右手の人差し指を突き立てる。ビシッと音が聞こえそうなくらいに勢いよく。 「僕は君が綺麗だと思うから」
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