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僕がそんなセリフを口にしてから数秒。彼女は硬直してしまっている。口はぽかんと開かれ、目はしっかりと僕の目を見据えている。
「でも、僕は誰かに、こういう人が綺麗な人だ、なんて教えられた覚えはない。思うに、本能で感じるんじゃないかな。だから、感情は押し付けられるものじゃない。どうかな、納得いかない?」
したり顔で僕は彼女を見つめ返す。僕が彼女を言い負かすことなど今まで一度も出来なかったから、すごく得意げに。
彼女の体はようやく脳からの信号を受理したのか、細かく動き出した。もっとも、それは手を小刻みに振るという、意味のない指令だったようだけど。
顔を見つめていると、そこにも変化が現れ出した。珍しくわかりやすく感情を表に出し始めたのだ。不健康に思えるほど白かった肌はもうそこにはない。
次は口が少しずつ動き出した。大分指令が届くようになってきたようだ。頑張れ、もう少し。さてさて、彼女はどんな反応を見せてくれるのだろうか。
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