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余裕で大木のてっぺんに到着した僕は枝の上に立ち、扉の向こう側の人間を見下ろした
夜目が利く僕にはその人間の細かい部分まで見ることができた
人間はやはり一人しかいなく、扉に寄りかかるようにして倒れている
俯いていて顔はわからないけど長い黒髪に土やら血やらで汚れた着物
着物からのぞく細い手足は傷だらけ
かなり寒いらしく、白い息を吐きながら生まれたての小鹿みたいに震えてる
…そういえば母さまもやけに寒がりだった
僕は体温が高いらしくて、寒い日はいつも僕を抱きしめて寝ていた
…それが自分が凍死しないようにする為だけの手段だったと気づくのに時間はかからなかったけれど…
とにもかくにも、人間は寒がりみたい
手負いのこのまま放っておいたら、明日の朝には確実にあの人間は死んでいるだろう
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