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目の前には真っ青な空が広がっていた。 (綺麗な空だなぁ) 一人の人間が、森にごろんと横になり、空を見上げた。 透き通るように白い肌に、切れ長の黒い瞳。中性的な顔立ちで、見た目だけでは性別はわからない。 その者の衣服は、男物の袴だった。 そんな、彼の表情は眉間に皺を寄せ、苦悶に満ちていた。 「ダメだな…。何も思い出せない」 彼のポツリと呟いた言葉は空へとすいこまれた。 今の時代が、1863年だということはわかる。 思い出せるのは自分の名前が有村翔(ありむらつばさ)だということ。 所持品は大小二本の刀のみ。 刀を所持しているということは、自分は武士なのだろうか。 刀には桜の紋章が掘られている。 自分のことだけが、思い出そうとしても頭に靄がかかっているようだ。
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