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動いたのは、どちらが先だっただろうか。
気付けば沖田と桂の2人は刀を交えていた。
「へぇ。強いですね」
感心したように、笑みを浮かべながら言う沖田。
「お前こそ、やるな」
桂もにやりと笑う。
ギリギリと、鍔迫り合いをしている互いの刀が悲鳴をあげる。
そのまま、沖田は刀をはじき返すと後ろへ飛んだ。
横壁に着地するとそのまま上から桂に向かって刀を振り下ろす。
それを紙一重でかわすと、桂は空中にいる沖田に向かって刀を一線させた。
刀を振り子代わりに体制を変えると、沖田もまた紙一重で桂の刀をかわす。
一瞬の攻防だったが、その動きの早いこと。
おそらく、素人であれば目で追うことすら困難だろう。
その時、沖田の刀が、桂の腕をかすめる。
桂は、わずかに眉間に眉を寄せ、沖田と距離をとった。
そして、バタバタと足音が聞こえてきた。
「沖田総司、覚えておく。この決着はまたいずれ」
そう言うと、沖田に向かい何かを放り投げた。
わずかな爆発音と共に、煙に巻かれる。
煙幕のようだ。
煙が晴れた先に、桂の姿はなかった。
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