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「逃げられちゃいましたか」
残念そうに言う沖田。その目は、今まで桂のいた場所を見つめている。
「はじめくんが言っていた通りだね。状況判断が早い。
できれば、殺したかったんだけどな」
囁くように言って、沖田はため息をついた。
その言葉を、翔はほんの少し複雑な気持ちで聞いていた。
2人の戦いに、全く手がだせなかったからだ。
「総司、有村、通り魔は!?」
バタバタと足音を立てて現れたのは原田だった。
隊服を着て、十番隊の皆様が続々と現れた。
「逃がしました」
「逃がしたぁ?」
さらっと言う沖田に、原田は素っ頓狂な声をあげた。
他の者ならいざ知らず、翔と沖田の2人で逃がすとは珍しい。
「相手は?」
「…桂小五郎です」
少し言いにくそうに翔が言うと、原田はため息をついた。
「…そうか…」
原田は言って優しく微笑むと、翔の頭をぽんと叩いた。
「仕方ねぇな。おい、斬られた女は?」
「え?あ…、すいません。見失いました」
原田の言葉に、隊士が答える。
「オイオイ、しっかりしろよ。じゃあ、この辺見回るぞ。1人にはなるなよ。
じゃあ、有村、総司、またな」
言って、原田は去って行った。
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