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「行きましょうか」
この場にいても仕方ない。沖田に声をかけられ、頷いた。
せっかく甘味に癒されていたのに、嫌な気分になってしまった。
「何か、言われたんですか?」
「あ、…いいえ、なんでも…」
「女が刀を持つこと自体、気に入らない」
…聞いてたんじゃん。
沖田の言葉に、がっくりうなだれる翔。
「あぁ、はい。まぁ」
翔は諦めて頷いた。
「今更じゃないですか?先日の新選組内部でも問題になってたでしょう?」
沖田の言葉に、翔は苦笑する。
「そうなんですけどね。なんか、桂と沖田さんの戦いも見てるだけで逃がしちゃうし、自己嫌悪というか、女だからこそもっと頑張らないといけないな、って」
「…有村さんは、何のために刀を持つのですか?」
「え?」
いきなり問われて沖田を見る。
足を止めて、まっすぐに見ていた。
翔の返答をじっと待っている。
「…新選組を守って、好きな人の力になりたいから、かな」
しばらく考えて、ポツリと答えた。
「僕も、同じです」
クスリと笑う声が聞こえて、見ると沖田は笑みを浮かべていた。
「正直僕は新選組はまぁ、どうなろうと知ったことじゃありません。
でも、近藤さんが大事なものだというなら守りたい。
有村さんも好きだから守りたいんです」
さらりと言ってのける沖田に、翔は顔が暑くなる。
「なにいって…」
顔を扇いで、赤くなった顔を見られないように顔を背けようとした。
しかし、それは叶わず、強く腕を引かれ、気付けば沖田の胸の中にすっぽりと収まっていた。
「殺されたりしたら、許しませんからね」
沖田は翔の耳元で囁く。
馬鹿だな、私。
全く成長していない。どれだけ沖田に心配かければすむのだろう。
「死ぬわけ、ないじゃないですか」
沖田の心臓の音を聞きながら、翔は言った。
沖田は翔の顎をつかんで上を向かせると、唇を重ねた。
翔もそれを受け入れて、瞳を閉じた。
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