拾八

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「うぐっ…」 しかし、胸から刀を突き出して、こときれたのは黒ずくめの方だった。 パタリと倒れた黒ずくめの背後から、沖田が姿を現す。 「助かりました。沖田さん」 礼を言う翔に、沖田は眉を寄せている。 なんでかな、と翔が首を傾げていると 「避けたらいいじゃないですか」 ため息をつきながら言われ、刀を指差しされる。 そこには、柄の頭で受け止めた銃の玉。 「え?あぁ。避けたら他の人に当たっちゃうかなーと思いまして」 「それはその人の落ち度です」 どうやら先程、自分が避けた事で、隊士が負傷した事を気にしたらしい。 一瞬沖田も翔が撃たれたのではないかと、肝を冷やした。 「あれ?死なないって言った事、信用してないんですか」 いたずらっぽく言う翔。 沖田は、そんな翔の額を指で弾く。 「いたっ」 「信用してますよ。誰よりもね」 言うと沖田は背を向け、状況を整理するため他の隊士のもとへ行った。 「痛いなぁ」 額をさすりながら、翔はほくそ笑む。 好きな人に信用してるといわれるだけで、なんだか胸が暖かくなったからだ。 「なに、不気味な顔してるんですか」 「不気味な顔とは失礼な」 まるで変なものを見るような目で隊士に見られ、翔は顔の緩みを正した。 「状況は?」 「戦闘はもう終わっています。犯人の顔を今沖田さんが…」 隊士にも状況を確認すると、隊士がざわついた。 沖田がいる方向だ。 翔と隊士は顔を見合わせ、頷くとそちらへ走る。 翔がたどり着くと、隊士は道を開けてくれた。 「沖田さん、どうし…。これは」 覆面を外した犯人の顔には見覚えがあった。 驚く翔に、沖田も頷く。 「伊東甲子太郎の仕業のようですね」
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