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「そうか…」
土方は眉間のシワをますます深くしながら、ため息を吐いた。
あれから屯所へ戻り、報告のため、沖田と翔は土方の部屋を訪れていた。
「そうなると、いよいよだな」
「どういうことです?」
まるで予測していたかのような、土方の口ぶりに、沖田は首をかしげた。
「おい」
土方は振り向き、ふすまの奥に声をかけた。
「はい」と返事をして出てきたのは、御陵衛士になったはずの斎藤だった。
「はじめくん!?なんで?」
驚いたのは沖田だ。
対象的に翔は冷静で、知っていたかのようだ。
「山崎、いるか?」
「はい」
音もなく天井からおりて来た1人の男。切れ長の瞳で物静かな雰囲気を漂わせている。
翔は山崎の登場に驚いたようで、その視線が自身に止まると、思わず固まってしまった。
しかし、そんな翔に構わず、山崎は無表情のまま、土方に向き合う。
「山崎、幹部を集めてくれ。作戦会議を行う」
「承知」
土方の命令に頷くと、山崎は再び音もなく消えた。
「今のって…」
まだ、びっくりして親族が早くなっているが、やっとの想いで、翔は隣にいた沖田に問う事ができた。
「ん?監察の山崎烝くんです」
「気配、まったくありませんでしたよね?」
「まぁ、山崎くんですからね。優秀な人です」
にっこりと沖田は言った。
優秀な人、ね。
新選組って、すごい人がいっぱいいるなぁ。
改めて実感した翔だった。
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