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その問いに、翔は瞳を伏せたあと、静かに首を横に振る。
「そうか。悪かったな、引き止めて」
土方は言うと去って行った。
その場に佇みながら、翔は考える。
もし未来が変わらず、翔の知っているものと同じならば、伊東は終わるのだろう。
自分は弱いだろうか。
あんなことがあって、彼との決着の機会を自ら投げてしまうのは。
いや、私情を挟むべきではないな。
首を振り、考えるのを放棄する。今自分がやれることを。
立ち止まっている暇はない。
沖田が伊東の暗殺に加わるため、一番隊の指揮は翔がとることになった。
こちらの新撰組のなかにも、伊東との密通者がいるかもしれない可能性がある。作戦の詳細はごく一部の者にのみ限られた。
「お疲れ様です。俺らはここで待機すればいいんですね?」
部下の言葉に、翔はコクリとうなずいた。
その行動に一番隊の者達も目配せで頷いた。
それにしても…。
これほど、時間がかかるものだろうか?
するとガキィンっと刀のぶつかる音が聞こえてきた。
まさか。
暗殺に失敗?
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